2026年8月末、キユーピーの育児食が65年の歴史に幕を下ろしました。
うちの娘はキユーピーのベビーフードが好きだったので、正直かなり残念です。同じように「これじゃないと食べてくれなかったのに」と困っている家庭も多いんじゃないでしょうか。
一方で、その翌日にあたる8月31日、石井食品がベビーフード市場への本格参入を発表しました。撤退と参入が立て続けに起きているこの業界、いま何が起きているのか。そして残っているメーカーはそれぞれどう違うのか。整理してみました。
キユーピーはなぜ撤退したのか
まず、今回の撤退の中身から確認しておきます。
キユーピーが育児食事業の終了を発表したのは2025年6月12日。約1年の準備期間を経て、2026年8月末で生産を終了しました。販売は順次終了となるため、店頭にはまだ在庫が残っている可能性があります。
対象となったのは「瓶詰」「にこにこボックス」「ハッピーレシピ」など全72品目。1960年の発売開始から65年間続いた事業でした。
理由は「品質を落としてまで続けられない」
撤退の背景として挙げられているのは、競争の激化と原材料・エネルギーコストの上昇です。
興味深いのは、市場そのものは縮小していないという点です。少子化が進む一方で育児食の利用頻度は高まっており、市場全体は微増で推移すると予想されていました。それでも採算の見通しが立たなかった。
キユーピーは「品質に妥協しない」という基本姿勢のもとで判断したと説明しています。つまり、コストを下げて品質を落とすくらいなら撤退する、という選択だったわけですね。
主力拠点だった佐賀県の鳥栖工場は他品目への転換を図り、従業員の雇用は維持する方針とのことです。
石井食品が2027年度に参入する
そして2026年8月31日、石井食品がベビーフード市場への本格参入を発表しました。
ミートボールでおなじみの会社ですが、1945年創業で2025年に80周年を迎えた老舗です。千葉県船橋市に本社を置いています。
商品の発売は2027年度中を予定していて、現在開発中とのこと。ラインアップや対象月齢、販売方法などの詳細はまだ発表されていません。
3つの軸で展開する
石井食品が掲げているのは次の3点です。
- 無添加調理:同社の製造過程では食品添加物を使用していない。だしのうま味で素材本来の味を引き立てる方針
- 食物アレルギー考慮:アレルギー配慮商品「いっしょがいいね」シリーズで培った知見を活用
- 食育:成長段階に合わせて食感や具材の大きさを工夫し、「食べる力」を育てる
ここで一点、注意しておきたいことがあります。今回開発されるベビーフードは、「いっしょがいいね」シリーズを製造しているアレルギー配慮商品専用工場での製造は予定されていないと明記されています。アレルギーのあるお子さんがいる家庭は、商品が出てから個別に確認する必要がありますね。
原材料の履歴をたどれる仕組み
石井食品の特色として面白いのが、トレーサビリティです。
同社は2000年から独自の原材料履歴管理システムを導入していて、「OPEN ISHII」というサイトで商品の品質保証番号を入力すると、使用している原材料・原産地・加工地・検査内容・アレルギー対象原料などを確認できます。
今回のベビーフードもこの対象になるとのこと。「何を使っているか」だけでなく「どこから来たものか」まで追えるというのは、他社にはあまりない強みだと思います。
ちなみに石井食品は2021年11月に「12ヶ月からのぱくぱくセット」を発売していて、幼児食にはすでに参入済みでした。今回はそこからさらに低月齢へ広げる形になります。
現在買える主要メーカーの特色
ここからは、いま店頭で買えるメーカーを整理していきます。
和光堂(アサヒグループ食品)
ベビーフード業界の最大手です。1906年創業で、日本で最初に小児科を開設した弘田長博士によって創られた会社という歴史があります。国産初の育児用ミルクとベビーフードを開発したのもこの会社です。
- グーグーキッチン:レトルトパウチで売上1位。全75品と品目数が圧倒的
- 栄養マルシェ:カップ入りでスプーン付き。そのまま食べられるので外出時に便利
- 手作り応援:粉末タイプ。お湯で溶かして使う。手作りに少し足したいときに使える
とにかく種類が多いので、迷ったらここから探すのが早いと思います。味は比較的あっさりめという評価が多いようです。
ピジョン
ベビー用品メーカーとして知られていますが、ベビーフードも幅広く展開しています。
特徴は「管理栄養士さんのおいしいレシピ」シリーズで、パッケージに栄養バランスが記載されているのがわかりやすいと評判です。月齢ごとの噛みやすさにも配慮されています。
味付けは3社の中ではやや濃いめ、とろみが強めという声があります。逆に言えば、薄味を食べてくれない子には合うかもしれません。
森永乳業
実はこの会社、一度撤退してから戻ってきています。
2022年にレトルトパウチのベビーフードを終売しました。理由は国産原料の安定調達が困難になったこと。他社が海外原料を使う中で「国産であること」が特徴だったため、海外原料に切り替えて続ける選択をせず、終売を選んだそうです。
そして2025年3月、3年ぶりに「森永 はじめてのベビーフード」「森永 オーガニックのベビーフード」で再参入しました。
- 生後5ヶ月頃から使えるペーストタイプ
- 口栓付きパウチで、容器から直接スプーンに出せる
- 常温で9ヶ月保存できるので防災備蓄にも使える
- オーガニックシリーズは有機JAS認証
2026年3月には主食タイプも追加されています。食器に移す手間がないので、外出先で使いやすいのが強みですね。
その他
雪印ビーンスタークも製品展開を続けています。有機JAS認定を取得した、国産有機野菜と有機米を使ったシリーズを出しているメーカーもあり、オーガニック志向の家庭にはそうした選択肢もあります。
市場で起きていること
撤退と参入が同時に起きているのは、市場が単純に縮んでいるからではありません。
需要はむしろ伸びている
出生数は減っているものの、共働きやワンオペ育児が当たり前になったことで、ベビーフードの利用頻度そのものは上がっています。
特に伸びているのが低月齢向けと口栓付きパウチです。1歳未満向けの口栓付きパウチ市場は2024年度に前年比約171%と大幅に伸長。5〜6ヶ月向けも同108%と拡大しています。
それでも採算が厳しい
問題は、単価が低いわりに品質要求が高いことです。
赤ちゃんが口にするものなので原材料も製造管理も妥協できない。でも価格は上げにくい。そこに原材料費とエネルギー費の高騰が重なった結果、キユーピーも森永乳業(2022年時点)も「品質を落とすくらいなら」という判断に至ったわけです。
逆に言えば、そこに勝算を見出した企業が参入してくる構図でもあります。石井食品が「無添加調理」「トレーサビリティ」という自社の強みを前面に出しているのは、価格競争ではなく品質で戦うという意思表示なのかもしれません。
キユーピー難民はどうすればいいか
うちのように「キユーピーじゃないと食べてくれない」という家庭にとっては、ここからが本題ですよね。
キユーピーの味の特徴は、比較記事などを見ると「さらっとしている」「自然な感じ」「醤油の香りに違和感がない」といった評価が多いようです。とろみが強すぎず、レトルト特有のにおいが少ないという点が支持されていたのだと思います。
近い方向性を探すなら、こんな進め方が現実的です。
- まずは在庫がある間に買い置きして、切り替えの時間を稼ぐ
- 複数メーカーを1つずつ試して、拒否されても2〜3回は間隔を空けて再挑戦する
- 味の濃さやとろみが原因かもしれないので、白がゆに混ぜるなど食べ方を変えてみる
幼児期の好みは固定されにくいので、今日ダメでも来週は食べる、ということも普通にあります。焦らず試していくのがいいと思います。
まとめ:選択肢は減ったが、なくなったわけではない
65年続いたブランドが消えるのは寂しいですし、選択肢が減るのは純粋に困ります。
ただ、森永乳業のように一度撤退しても形を変えて戻ってくる例もありますし、石井食品のように新しく参入してくる企業もあります。市場としての需要は確実にあるので、これで終わりということはないはずです。
石井食品の商品が出るのは2027年度中の予定。それまでは既存メーカーの中から、我が子に合うものを探していくことになります。当面は買い置きと味の探索、この2つで乗り切っていきましょう。




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